アニサキス症とは?日本で多い理由と症状、予防法を解説
アニサキス症とは?日本で多い理由と症状、予防法を解説
生鮮食品に寄生するアニサキス。アニサキスによる食中毒「アニサキス症」は、日本において身近な食中毒です。
今回はアニサキス症が日本で多い理由や食中毒を起こしやすい時期について解説するとともに、アニサキス症の症状や予防法についてお伝えします。
アニサキス症とは?
アニサキス症とは、アニサキスと呼ばれる寄生虫が胃や腸の壁を刺入することで激しい痛みを起こす寄生虫症です。まずは、アニサキスとアニサキス症が日本で多い理由について見ていきましょう。
アニサキスとは?
アニサキスとは、アニサキス亜科幼虫の総称で、イルカやクジラなどの海に住む哺乳類の胃や腸に寄生する線虫です。アニサキスの幼虫の大きさは、長さ2~3cm、幅0.5~1mmくらいで、白色の太い糸のように見えます。
アニサキスは海中で卵からふ化したあとオキアミに食べられ、オキアミは海産魚やイカなどに食べられます。海産魚やイカに寄生している間は幼虫ですが、イルカやクジラなどの海産哺乳類に食べられると成虫になるといわれています。
アニサキスに感染した海産魚やイカを食べることによって起こる食中毒を「アニサキス症」と呼んでいます。
アニサキス症が日本で多い理由
アニサキスの幼虫は、寄生している海産魚やイカが死ぬと、内臓から筋肉に移動することが分かっています。十分に冷凍または加熱することで、アニサキスの幼虫は死滅しますが、不十分であると海産魚やイカなどの筋肉で生き残ります。
そのため、刺身や寿司といった生魚を食べる風習がある日本人は、アニサキス症にかかりやすいといえるでしょう。
アニサキス症にかかりやすい時期
アニサキス症は年間を通して発生する食中毒です。厚生労働省が公表する令和4年のデータでは3月、6月、10月に患者数が増加しています。このことから、アニサキス症はかかりやすい時期があることがわかります。
アニサキス症の症状
アニサキス症は、アニサキスが寄生する部分によって、胃アニサキス症、腸アニサキス症、消化管外アニサキス症、アニサキスアレルギーと呼び名が分けられています。それぞれの特徴を見ていきましょう。
胃アニサキス症
胃アニサキス症は、生魚を食べた数時間後に、お腹の上部に激しい痛みを感じたり、悪心やおう吐が起こったりするのが特徴です。ほとんどのケースが、この症状といわれています。
しかし、なかには無症状のケースがあり、健康診断で胃カメラを行った時に発見されることがあるようです。
腸アニサキス症
腸アニサキス症は、食後数時間から数日後に腸の壁を刺入するケースで、腹痛や悪心・嘔吐といった症状のほかに、腸閉塞や腸穿孔を起こす場合があります。
消化管外アニサキス症
アニサキス症は、まれに胃や腸などの消化管を通り抜け、消化管外に寄生して肉芽腫を作ることがあります。これを消化管外アニサキス症と呼び、寄生部位によって症状が異なります。
アニサキスアレルギー
生魚を食べた後に、蕁麻疹を起こすことがあります。アニサキスアレルギーと呼ばれ、蕁麻疹のほかに、血圧降下や呼吸不全、意識喪失といったアナフィラキシーショック症状が出ることもあるようです。
アニサキス症の予防法
現時点で、アニサキス症に効果のある駆虫薬は開発されていません。そのため、アニサキス症にならないように、しっかりと予防することが大切です。ここでは、消費者と事業者がそれぞれできる予防法について見ていきましょう。
消費者ができる予防法
厚労省のホームページでは、消費者ができるアニサキス症の予防法について次の4つをあげています。
・魚を購入する時は、なるべく新鮮なものを選ぶ。
・1匹丸ごと購入した時は、なるべく早く内臓を取り除く。
・内臓を生で食べない。
・アニサキス幼虫がいるかどうかを確認する。
アニサキスの幼虫は、食酢や塩漬け、醤油、ワサビでは死滅しないため、これらの注意点をしっかりと守ることが大切です。また、スーパーなどで刺身を購入する際は、刺身用として販売されているものを選びましょう。
事業者ができる予防法
事業者ができる予防法については、次の5つがあげられています。
・新鮮な魚を選び、速やかに内臓を取り除く。
・魚の内臓を生で提供しない。
・目視で確認して、アニサキス幼虫を除去する。
・-20℃で24時間以上冷凍する。
・70℃以上、または60℃なら1分加熱する。
事業者は、アニサキスに感染した魚介類が消費者の元に届かないよう対策をする必要があるでしょう。
アニサキス症の疑いがあるときは
お刺身や十分に加熱されていない魚を食べたあとに腹痛が起こったら、アニサキス症を発症している可能性があります。アニサキスは感染から3週間以内に自然に消化管内から消失することが分かっていますが、その症状は重いものです。
疑いがある場合には、すぐに医療機関を受診して適切な治療を受けるようにしましょう。