2022/01/27 コラム

著者:Africatime編集部

救急車を呼んでも来ない!?救急医療が切迫している

救急車

救急車を呼んでも来ない!?救急医療が切迫している

119番通報をしたことはありますか?

ほとんどの人はないかもしれません。しかし、目の前で大きな事故があったり、急に胸が苦しくなったり、家族や友人が突然倒れたりしたら「救急車を呼ぼう」と考えることでしょう。

 

日本は、いつでもどこでも119番通報すると無料で救急車を呼ぶことができる、医療サポートが充実した国です。ところが今、日本の救急医療は切迫しています。救急車を呼んでもなかなか来てくれないことがあるかもしれません。

 

高齢者だらけ!?救急車と救急医療の現実

総務省消防庁が公表している「平成30年版 救急救助の現状 救急編」では、救急搬送された人の年齢層についてまとめられています。それによると、1997年は高齢者が占める割合が約34%だったのに対して、2017年は59%まで上昇していることが分かりました。

 

救急車で搬送された約573.6万人のうち、約337.2万人が高齢者だったということです。

 

救急現場では、耳が遠い高齢者に対して医師や看護師などの医療従事者が大きな声でゆっくりと話すことも少なくありません。理解度が低い場合は、何度も繰り返し説明する必要があるでしょう。診療や処置に時間がかかりやすくなることは、救急現場の負担となります。

 

命に関わる救急現場において、一人ひとりの診療時間が長くなることは、受け入れられる患者数が少なくなることを意味します。「交通事故などで一刻も早く治療を受ける必要がある救急患者が、受け入れられないケースがある。」それが今の日本です。日本の少子高齢化社会は、救急現場に影響を与えているといえるでしょう。

 

年々到着が遅くなる救急車

総務省消防庁が行った調査「救急車の現場到着時間と病院収容時間の推移(全国平均)」によると、救急要請を受けてから救急車が現場に到着するまでの時間は、2007年は7.0分であったのに対して、2017年は8.6分とされています。

 

今の日本の救急体制は、119番通報があると、現場に一番近い場所に待機している救急隊が出動します。一番近い救急隊が他の現場に出動している場合は、その次に近い救急隊が出動し、二番目の救急隊も出動している場合は、三番目に近い…というように救急隊の出動場所がどんどん遠くなっていきます。全体の出動件数が増えるほど、現場から最も近い救急隊がすでに出払っているケースが増えやすく、おのずと現場への到着時間が遅くなってしまうことが考えられます。

 

救急車の理想的な到着時間は

JRC蘇生ガイドラインでは、「救急通報から救急隊が現場に到着するまでの時間を6.7分から5.3分に短縮したところ、全心停止傷病者の生存率が33%改善した」と記載されています。また、一般市民が心臓マッサージを続けられる時間が5〜6分のため、救急車の理想的な到着時間は6分台です。

 

しかしながら、総務省消防庁が行った調査『平成30年版 救急救助の現状』によると、到着時間が6分台である地域はほとんどなく、達成しているのは京都府のみです。

 

また、総務省の調査で、救急隊による心肺蘇生開始までの時間が10分を超えると生存率が低下することが分かっています。ほとんどの地域で到着時間10分以内をクリアしており、達成できていないのは東京都(10.7分)のみでした。最低ラインをクリアしている地域は多いものの、理想的な到着時間からは程遠いことから、国や各自治体は、毎年救急隊を増強しています。

 

救急車の「たらいまわし」問題

救急隊は、病院が救急患者の受け入れを断ると、次の病院へ受け入れを要請し、2件目の病院が断ると、3件目の病院へ連絡します。次々と受け入れを断られ、救急患者の搬送先が決まらないことを「たらいまわし」と呼んでいます。「たらいまわし」の大きな問題は、救急隊から医師への引き継ぎ時間が延長することにあります。例えば、交通事故などで出血をしている場合、複数の病院が受け入れを断ると、その間出血が続き、最終的には出血多量で亡くなってしまうかもしれません。

 

あるいは、中等症だった救急患者が徐々に重症化する可能性もあるでしょう。中等症であれば、回復が早く短期間の入院で済むかもしれません。しかし、重症化すると医師の処置に負荷がかかりやすく、また患者さんは長期入院を余儀なくされる可能性もあるでしょう。早く回復できることは、患者さんや処置をする医師にとってメリットが大きく、さらにベッド回転率の面から病院経営においても重要です。

 

早期に搬送先が決まることは、救急患者・救急隊・医師・病院のそれぞれにメリットがあります。そのため、重症度に限らず速やかに救急患者の受け入れ先が決まる仕組みを作ることが大切です。自治体の中には、地域の医療機関が連携して、救急患者を受け入れられる仕組みを策定しているところもあります。

 

救急現場からは悲鳴の声が

次々と搬送される救急患者に対して、医療の質を一定以上に維持するのは難しく、医療費や医師、医療施設といった限られた医療資源を平等に使うことが正解なのか悩む医師もいます。病院の状況によっては、救命医が在籍しないところもあるでしょう。救命医がいない病院では、受け入れ時に出勤している医師が救急患者の対応をするといった体制を取っています。

 

そうした救急体制の場合、医師が通常診療と救急診療を兼務するため、医師の負担が重くなりやすいです。通常診療に影響が出てくることで、救急科を閉じる選択せざるを得ない病院はあるでしょう。対応する救急隊や医師が限界を感じてしまうことで、救急現場の状況は、今以上に悪化していくかもしれません。

 

救急医療の現場は切迫している

高齢化社会に伴い、救急医療の現場は切迫しています。自身が救急車を必要とする場面に遭遇した時、なかなか救急車が到着しなかったり、搬送先が決まらなかったりするかもしれません。一刻も早く、この状況を打破する政策が求められています。

以上、急車を呼んでも来ない!?救急医療が切迫している!について記しました。