2023/04/26

著者:Africatime編集部

傷は湿らせたまま治す〜新しい治療法「湿潤療法」

新しい治療法「湿潤療法」

傷は湿らせたまま治す〜新しい治療法「湿潤療法」

ちょっとした傷口の手当てはどのように処置していますか?以前は、切り傷や擦り傷、やけどなどの傷口は「乾燥させた方が治りが早い」という考えかたが一般的でした。ところが、傷や、やけどの治療には、自己治癒力を引き出しながら、傷口を乾燥させずに治療した方が、より早くきれいに治るという新しい選択肢が今、話題になっているのです。

今回は、傷ややけどの治療に自己治癒力を最大限に活用した新しい選択肢「湿潤療法」についてご紹介したいと思います。

 

 

 

湿潤療法とは?

まず初めに、湿潤療法についてご紹介していきたいと思います。

湿潤療法とは、別名「うるおい治療」「ラップ治療」などと言われている通り、傷口をラップなどで覆い、うるおいを逃さずに傷を治療する治療法です。

 

従来、正しいと思われていた傷口の治療方法は、「傷口を消毒してから傷口を乾燥させて、かさぶたを作るもの」「かさぶたが剥がれ落ちたら完治」と考えられていました。

 

ところが、この従来の治療方法と湿潤療法には、大きな違いが3つあります。

 

1. 消毒を使わない

従来の治療方法では消毒を使いますが、湿潤療法では消毒を使いません。

なぜなら、消毒は傷を修復する過程で活躍する自己修復細胞を殺してしまうからです。

 

患部は消毒液を使わずに、流水できれいに洗い流します。流水で洗い流すことで雑菌を減らし、その後の自然治癒力を高めます。きれいになった傷口には、傷を治すためのさまざまな自己修復細胞が最善のタイミングで傷口に集まり、修復活動を始めます。

 

傷の修復過程で、傷口からジュクジュクした黄色い液体(浸出液)が出てきますが、これには自己修復細胞が大量に含まれています。決して化膿して出た液体ではないということを覚えておいて下さい。つまり、流水で傷口をきれいにし、消毒を使わないことで、自己治癒力を最大限にアップさせることができるのです。

 

 

2. 傷口を乾燥させない

従来の治療方法では傷口を乾燥させますが、湿潤療法では乾燥させません。

傷口は湿ったままの方が自己修復細胞が増えやすいという理由があるからです。また、自己修復細胞は湿ったままの環境の方が活動しやすく、その方が傷口の治りも早いといわれています。

 

 

3. かさぶたを作らない

従来の治療方法ではかさぶたを作りますが、湿潤療法ではかさぶたを作りません。

なぜなら、傷口がかさぶたで覆われることで、傷口の治癒が遅れてしまうからです。

かさぶたは、「死んだ細胞の集まり」だからです。かさぶたができると、自己修復細胞は集まらず、必然的に傷口の治癒が遅れてしまうのです。

 

加えて、かさぶたが皮膚を引っ張ることで生じる違和感や、ふとした拍子に、かさぶたが剥がれて再び出血するなど、あなたもおそらく経験されているのでは無いでしょうか?

 

かさぶたは、治癒を遅らせるだけでなく、ときには傷口を化膿させる原因にもなります。かさぶたは作らずに治療する方法が、傷を早く治しますし、傷跡も残らないといわれています。

 

 

 

湿潤療法のメリットとデメリット

続いて、新しい選択肢「湿潤療法」のメリットとデメリットをご紹介して参ります。

 

 

メリット

湿潤療法のメリット

1. 傷口を覆うラップの交換は、従来の治療法で使用するガーゼの交換と比較すると、傷口が引っ張られたり、かさぶたが剥がれたりしないので、痛みが最小限で済む

2. 自己修復細胞(血小板など)が活動しやすい環境となるため、傷の治りが早い

3. 傷口を覆っているラップを濡らしてしまっても問題ない(ガーゼの場合は、水で濡らしてしまうと交換が必要です)

4. 家庭で手軽にできる治療法である

 

 

デメリット

湿潤療法のデメリット

1. 傷口がきれいに洗われていないまま傷口をラップで覆うと、雑菌が繁殖してしまう可能性がある傷口の深さなど、傷の状態を正確に把握できない場合は自己判断しない

2. 傷口の深さなど、傷の状態を正確に把握できない場合は自己判断しない

3. 擦り傷や軽度のやけど以外には使えない場合がある(自己判断が危険な可能性がある)

 

 

湿潤療法は家庭でもできる治療法です!

湿潤療法は家庭にあるもので対応できる治療法です。夜間や休日など、すぐに病院に行けない時などにも役立ちます。

 

では、実際に家庭で行う際の手順をご紹介します。

 

1. 傷口を水道水などの流水で十分に洗い流し、傷口についた血液や汚れなどを洗い流す。*このとき、消毒液は使わないで下さい。

 

2. 傷口を湿潤治療用の傷パッド、防水フィルム材などのハイドロコロイド製剤(創傷被覆材)で覆う。

*傷口からジュクジュクした黄色い液体(浸出液)が出ますが、回復に向かっているサインなので心配する必要はありません。ただし、浸出液が傷パッドをはみ出すほど大量に出ていたり、傷口から嫌な臭いがする場合は、雑菌が繁殖している可能性があるので、かかりつけ医に相談をして下さい。

 

3. 傷口を覆ったハイドロコロイド製剤(創傷被覆材)を1日1〜2回交換する。交換の度に傷口に雑菌が繁殖していないか、注意する

*臭いや浸出液の量などをチェックして下さい。異常が見られる場合は、すぐにかかりつけ医に相談をして下さい。

 

 

湿らせたまま治す新しい治療法「湿潤療法」はいかがでしたか?私たちの身体に備わっている自然治癒力を最大限に活かした治療法は、完治後、傷跡がほとんど残りませんから、顔などの目立つ場所にも使える治療法です。

 

残念ながら、縫合が必要な深い傷口には使えませんが、日常の小さな傷や軽度のやけどなどであれば使える治療法ですので、試してみて下さいね。