2023/03/29 コラム

著者:Africatime編集部

大人の百日咳が増えている?症状や原因、検査・予防方法を紹介

百日咳

大人の百日咳が増えている?症状や原因、検査・予防方法を紹介

 

 

大人の百日咳が増えているといわれています。今回は、大人の百日咳について国立感染症研究所のデータを紹介するとともに、百日咳の特徴的な症状や咳以外の症状、原因、検査、治療、予防方法についてお伝えします。

 

大人の百日咳が増えている?

百日咳というと子供がかかる感染症というイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、最近では大人の百日咳が増えているといわれています。

 

国立感染症研究所のホームページによると、全国約3,000の小児科定点から百日咳の報告がされており、以下のような推移をしていると公表されています。

 

・2001~2006年:0.44~0.73

・2007年:0.97

・2008~2012年:1.30~2.24

・2013年:0.53

・2014年:0.66~0.95

 

2013年に減少していますが、その後は増加傾向になっており、近年は小学校高学年以上の患者が多い傾向にあります。

 

2016年は15歳以上の患者が全体の25%を占めていることから、より正確に百日咳を疫学的に把握するため、2018年1月1日から成人を含む検査診断例の全数把握をすることとなりました。

 

 

 

百日咳とは?

百日咳は、大人が感染しても重症化することはほとんどありません。そのため、咳が長引いていると軽視されることがあります。しかし、百日咳はとても感染力が強い疾患のため、会社や学校などでの集団感染を引き起こす可能性が高まります。

 

また、生後6カ月未満の新生児や乳児が百日咳に感染すると、咳だけでなく肺炎や脳症などの合併症を引き起こすことがあります。そのため、大人が百日咳になった場合は、周囲に感染させないように気を付ける必要があるでしょう。

 

百日咳を広めないためにも、まずは百日咳にかかったことにいち早く気が付けるよう備えておくことが大切です。ここでは、症状や原因に加え、百日咳の検査と治療、予防方法について見ていきましょう。

 

特徴的な症状

通常は7~10日の潜伏期間のあと、軽度の咳症状が現れます。次第に咳の回数や程度が強くなり、発作性けいれん性の咳と呼ばれる咳に変わっていくのが特徴です。

 

・コン、コン、コンという短い咳が連続的に起こる。

・息を吸う時に笛を拭くようなヒューという音が鳴る。

 

さらに、激しい咳が続くことによって嘔吐したり、赤ちゃんの場合には咳をする前に呼吸をしなくなったりすることがあります。突然の無呼吸状態によって、呼吸困難やけいれんなどを併発することもあるでしょう。

 

また、咳の発作が出ていないときは無症状ですが、何らかの刺激が加わると発作が誘発されやすく、特に夜間は発作が出ることが多いといわれています。

 

咳以外の症状

百日咳は息を詰めて咳をするため、顔周りの血圧が上がり、顔面浮腫や点状出血、眼球結膜出血、鼻血などが見られることがあるのも特徴です。

 

また、通常の風邪とは異なり、ほとんどの場合、熱はなく、あっても微熱程度で、鼻水などの症状も少ないといわれています。

 

原因

百日咳は百日咳菌と呼ばれる菌に感染することで発症する病気です。感染経路は、飛沫感染や接触感染があげられます。

 

百日咳にかかった人の咳やくしゃみで感染したり、ドアノブなどに付着している菌から感染したりすることが考えられるでしょう。

 

検査

2016年より以前は、感染初期と回復期に抗百日咳毒素抗体と呼ばれる抗体の検査をする血清診断が主流でした。ペア血清と呼ばれ、以下の基準を満たしたときに、百日咳と診断されます。

 

1、急性期の抗PT IgG価が陽性(10~100未満EU/mL)から回復期に2倍以上の有意上昇を認めた場合(有意上昇)

2、単一血清で抗PT IgG価が100 EU/mL以上の高値(発症後2週間以上経過している必要あり)

 

現在、世界的にはリアルタイムPCR法が採用されています。しかし、日本では、より簡便で迅速な診断ができる百日咳菌LAMP法が開発されたため、この検査キットを使った診断が主流となっています。

 

2016年11月以降は、百日咳菌LAMP法を使った検査が健康保険適用でできるようになりました。この検査は、症状が出現してから3週間以内に後鼻腔検体を用いることとされています。

 

治療

百日咳の治療は、生後6カ月以上の患者さんにはエリスロマイシンやクラリスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬を使用します。新生児が感染した場合は、アジスロマイシンで治療することが推奨されています。

 

抗生剤を使った治療が基本となるため、感染した場合は耐性菌の出現を防ぐためにも、しっかりと処方された薬を飲み切ることが大切です。

 

予防

百日咳の予防方法は、基本的にはワクチンの接種です。ただし、百日咳ワクチンの免疫効果は4~12年で減弱するといわれており、子供の頃にワクチンを接種した大人が百日咳に感染することは十分にありえます。

 

そのため、日頃から、うがいや手洗いなどの感染対策をすることが大切です。

 

 

 

大人が百日咳にかかったら

百日咳は子供がかかる感染症と思われがちですが、大人も感染することがあります。ただし、大人の場合は症状が軽く、気がつきにくい傾向にあるのが特徴です。

 

大人は、百日咳の症状や原因についてしっかりと把握しておくことで、いち早く感染したことに気がつけます。自身の感染に気がつき適切な対策を取ることが、重症化しやすい乳幼児や小児への感染の予防につながるでしょう。

 

 

大人が百日咳にかかったら、子供へ感染させないようにしっかりと対策をすることが求められています。