「ADL」をご存知ですか?冬場にADLを低下させないためにできること

「ADL」をご存知ですか?冬場にADLを低下させないためにできること
気温の低い冬場は「寒いから」という理由で自宅にこもりがちになりませんか?温かいこたつやヒーターの近くを陣取ると「トイレに行くのも面倒!」となってしまうこともあるかも知れません。寒い冬場は、老若男女問わず運動量が落ちる季節でもあります。寒さが原因で動けない、動きたくない、そんな季節だからこそできるADL低下を避けるコツをお届けします。
ADLとは?
あなたは「ADL」という言葉を知っていますか?
ADLとは「Activities of Daily Living」つまり、Activities:動作とDaily Living:日常生活、つまり「日常生活動作」のこと。
ADL(日常生活動作)とは、具体的に私たちが日常生活を送る上で欠かせない以下の動作を指しています。
・睡眠
・起床
・食事
・排泄
・着替え
・移動
・歩行
など。
一方で、このADL(日常生活動作)は、高齢者や障害者など、自立した日常生活を送ることが困難な方が、どの程度問題なく日常生活が送れているのかを示す指標でもあります。
上記の動作を介助なくひとりで行える人ほど、ADLが高く、自立した生活が可能といえるので、介護士やヘルパーさん、リハビリ施設などからの手厚い介護は必要ないといえるでしょう。
逆にADLが低い人ほどたくさんの介助を必要としますから、指標を基準に適切な介護を受ける必要性があります。この場合のADLはさらに以下の2つの種類に分類されます。
基本的日常生活動作(BADL):
人間らしい日常生活を送る上で最低限必要な動作のこと。支障が見られる場合は、介護が必要となります。
手段的日常生活動作(IADL):
日常生活におけるやや複雑な動作を指します。例えば、
・移動する(交通手段の決定、必要切符を買う、自宅に戻る、など)
・料理する(献立を決める、必要な材料の買い物、料理、出来上がったものを提供する、など)
・電話の対応(電話を受ける、電話をかける、話すなど)
・金銭の管理(銀行口座の管理、ATM作業、預貯金の管理、クレジットカードや現金の使用、など)
介護を受けるにあたり、これらの項目を評価し、どの程度介護を必要としているか判断します。
なぜ冬場は「ADL低下」が見られるのか?
寒い冬場は、老若男女問わず外に出る意欲も失いがち。特に高齢者は、その傾向が強く、運動量がガクッと落ちる季節でもあります。すると、必然的にADLの低下も起こるのです。
理由1:外出しないことで起こるADL低下
寒さが原因で動けない、動きたくない、そんな季節だからこそ、ついつい外出が億劫になることもありますよね。そうなると、日常生活における複雑な動作を行わない日が増える可能性がでてきます。例えば、
・スケジュールや時間の管理
・外出をするために身だしなみを整える一連の動作
・移動
・第三者との会話のキャッチボール
・金銭の管理
・食事をする場合は、食事をする動作(噛む、咀嚼する、飲み込む)
現役で仕事をしていた頃と比較すると分かりやすいかも知れませんが、当時は、寒い冬でも当たり前に仕事に行き、これらの動作を行っていたでしょう。ところが、現役引退後はこれらの動作をする機会がどうしても減少してしまうのです。
理由2:筋肉量と体温の関係
筋肉量は特別なトレーニングを行わない限り、30代をピークに減少傾向にあります。高齢者の方は、加齢とともに筋肉量が減少しますし、障害者の方は、障害の程度によって筋肉量に差が生まれてしまうこともあります。
私たちの体の体温は、筋肉量が多ければ多いほど高くなりますし、低いと体温を上げることができません。冬場は外気温の影響で「寒さ」を感じやすいのですが、そもそも筋肉量が少ないと外気温に関係なく、体が冷えた状態となってしまうのです。
その結果「寒さが原因で動けない、動きたくない」となってしまい、悪循環になってしまうことも。
改善策としてできることは?
ADL低下を防ぐためにできる解決策1:外出
気温の高い日中に、ご家族やご友人が、高齢者の方や障害者の方を外に連れ出すことで、必然的に運動量が増えます。気温が高い時間帯を選べば、風邪などの体調不良を起こすリスクも避けられるでしょう。普段、自宅にこもりがちな高齢者も日中の太陽の光を浴びることで、リラックス効果やストレス軽減効果を実感できるかも知れません。
日中、家族や友人が忙しく時間が取れない場合は、デイサービスなどを利用するのも良いでしょう。
外出の予定を入れるだけで、単純に動作が増えます。必然的に筋肉を使いますし、心の健康面にも良い効果が得られますから、まさに一石二鳥の解決策と言えるでしょう。
ADL低下を防ぐためにできる解決策2:軽い運動
室内でできる軽い運動をおすすめします。
例えば、昔ながらのラジオ体操は畳1畳分の場所さえあれば、どこにいても全身運動が可能です。座ったままの動きもありますから、日中の温かい時間帯に体を動かしてみるのも良いでしょう。また、椅子や壁に手を置いたまま、かかとの上げ下げをしたり、足を膝の高さまで上げて歩く動作を行ったりと、工夫次第で下半身の筋肉を使う軽い運動も可能ですから、まずは筋肉を使う動作を意識することから初めてみましょう。