2021/11/25 コラム

著者:Africatime編集部

新型コロナウイルスの治療に希望!抗体カクテル療法とは

抗体カクテル療法

新型コロナウイルスの治療に希望!抗体カクテル療法とは

抗体カクテル療法は中和抗体療法とも呼ばれており、新型コロナウイルスが体内で増殖するのを防ぐための治療です。ここでは、抗体カクテル療法について解説するとともに、対象患者さんなどについてお伝えします。

 

抗体カクテル療法とは

抗体カクテル療法は、体内に「カシリビマブ」と「イムデビマブ」と呼ばれる2種類の抗体(薬剤名:ロナプリーブ)を注入する治療です。抗体がウイルスの表面にあるスパイクタンパク質に結合し、人の細胞に新型コロナウイルスが侵入するのを防ぎます。

発症から7日以内の軽症患者さんから中等症患者さん、特に肺炎を起こしていない初期の患者さんに投与することで、重症化を防ぐ効果が期待されています。

 

点滴または皮下注射で治療

新型コロナウイルスの治療薬として認可を受けている薬剤「ロナプリーブ」は、点滴静脈注射と皮下注射で投与されます。点滴静脈注射の場合は20~30分程度の点滴治療1回で治療が終了し、皮下注射の場合は2種類の抗体をそれぞれ投与するため、各2回(計4回)皮下注射を行うことになります。

 

「軽快」と判断された患者さんが95.2%

2021年9月9日に開催された東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議で、抗体カクテル療法の実施状況が報告されました。

投与から14日以上経った患者さん420例のうち、95.2%にあたる400例の症状が「軽快」したと報告されています。

「軽快」とは、投与後に重い有害事象がなく、軽快と報告された患者さんです。「非改善」は4.5%(19例)で、投与後に酸素投与が必要になるといった悪化した例や、軽快したという報告がなかったものが含まれています。死亡例は0.2%(1例)あり、60歳代の基礎疾患がある男性だったと報告がありました。

抗体カクテル療法による新型コロナウイルス感染症の治療に、期待が集まっています。

 

抗体カクテル療法の治療対象者は?

抗体カクテル療法は、新型コロナウイルスに感染したすべての患者さんが受けられるわけではありません。基礎疾患や症状などによって治療対象者が異なります。

 

抗体カクテル療法の対象となる患者さん

抗体カクテル療法を行うための薬剤「ロナプリーブ」の適応患者さんは、新型コロナウイルス感染症の重症化リスク因子を有し、酸素投与を必要としない患者さんです。抗体カクテル療法を行うことで、重症化リスクを低減する効果が期待されています。

重症化リスク因子とは、年齢50歳以上・肥満・心血管疾患・慢性肺疾患などのことで、重症化のリスクがある患者さんに対してロナプリーブが投与されます。

 

抗体カクテル療法の対象とならない患者さん

高流量酸素や人工呼吸器管理が必要など、重症の患者さんは治療対象ではありません。また、重症化リスク因子を有しない患者さんも、現時点では治療対象とならないことを覚えておきましょう。 

 

抗体カクテル療法を慎重に行う必要がある患者さん

抗体カクテル療法を特に慎重に行う必要があるのは、以下に当てはまる人です。

  • ・注射剤などでアレルギー症状を起こしたことがある人
  • ・妊婦または妊娠している可能性がある人
  • ・授乳中の人
  • ・新型コロナウイルスワクチンを接種した人や接種予定の人。

上記に当てはまる人は、抗体カクテル療法を受ける前に医師に確認するようにしましょう。

 

抗体カクテル療法は外来でも使用可能に

抗体カクテル療法はこれまで、入院患者さんのみが対象となっていましたが、2021年8月25日付けで外来でも使用可能になりました。これにより、医療施設に位置付けられない宿泊療養施設や入院待機施設で療養している患者さんに対しても、抗体カクテル療法による治療が可能になります。

しかしながら、外来での抗体カクテル療法は、すべての医療機関が実施できるわけではありません。実施するための要件を満たした医療機関のみが可能です。そのため、抗体カクテル療法を受けるためには、要件を満たした医療機関を受診するか、もしくはその医療機関からの往診や訪問診療を受けることになります。

いずれにしても、入院しなければならない程、重症化する前に外来で抗体カクテル療法が受けられるのは安心ですね。

 

発症抑制の目的で抗体カクテル療法が投与可能に

抗体カクテル療法に使用される薬剤「ロナプリーブ」が、新型コロナウイルスの発症抑制を目的に投与できるようになりました。2021年11月4日に厚生労働省が、この特例承認を了承したことにより、今後は濃厚接触者や無症状の陽性者に対して治療できるようになります。

新型コロナウイルス感染症予防の基本はワクチン接種ですが、アレルギーなどを理由にワクチン接種ができない人もいます。そういった人が濃厚接触者や無症状の陽性者となった時の選択肢として、抗体カクテル療法を選ぶことができる点は、大きな安心につながるでしょう。

 

抗体カクテル療法の効果に期待が集まる

抗体カクテル療法を行うためには、医療機関、患者さんともに複数の要件を満たす必要があり、必ずしも治療ができる・受けられるというわけではありません。しかし、95.2%の患者さんが軽快したというデータや発症抑制の目的で使用が可能となり、抗体カクテル療法に期待が集まっています。

まずは、ワクチン接種を行い予防に努めることが一番ですが、もし新型コロナウイルスに感染してしまっても、治療法があることは、重症化リスク因子を持つ人にとって心強いでしょう。

以上、新型コロナウイルスの治療に希望!抗体カクテル療法について記させて頂きました。